愛犬が元気がない、食欲が落ちる、ときどき吐く・下痢をする——しかも良くなったり悪くなったりを繰り返す。それは「見逃されやすい病気」として知られる犬のアジソン病かもしれません。
アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、症状が他の病気と似ているため診断が難しく、ときに命に関わる発作(アジソンクリーゼ)を起こします。この記事では、犬のアジソン病について、見逃しやすいサインや原因、ACTH刺激試験による診断とホルモン補充治療、日常のストレス管理までを獣医学研究の根拠とともに解説します。
犬のアジソン病とは|副腎のホルモンが足りなくなる病気
犬のアジソン病は、副腎から出るコルチゾールやアルドステロンといったホルモンが不足する病気です。これらは、ストレスへの対応や体内の塩分・水分バランスを保つ大切なホルモンで、不足すると全身に不調が現れます。Doboszら(2026)は、犬のアジソン病の臨床像と診断の進め方を整理し、早期の気づきが重要だと述べています。
同じ副腎の病気でも、ホルモンが過剰になるクッシング症候群とはちょうど逆の関係にあります。

犬のアジソン病の見逃しやすいサイン|元気消失・嘔吐・下痢
犬のアジソン病のサインは、元気消失・食欲不振・嘔吐・下痢・体重減少など、どれも他の病気でも見られる非特異的なものばかりです。しかも調子が良くなったり悪くなったりを繰り返すため、「なんとなく不調」で見過ごされがちです。
Tardoら(2024)は、慢性の消化器症状を示す犬のなかにアジソン病が隠れていることがあり、先にステロイドを使うと診断が難しくなる(見逃されやすくなる)と報告しています。
とくに注意したいのが、ストレスをきっかけに急にぐったりして倒れる「アジソンクリーゼ」です。ショック状態になることもあるため、急な虚脱が見られたら夜間でもすぐに受診してください。
犬のアジソン病の原因とリスク|自己免疫・好発犬種
犬のアジソン病の多くは、自分の免疫が副腎を壊してしまう自己免疫が原因と考えられています。若〜中年の雌犬にやや多い傾向があります。
Gershonyら(2020)は、ビアデッド・コリーでアジソン病に関わる遺伝的な背景を明らかにしました。スタンダード・プードル、ポルトガル・ウォーター・ドッグ、ノヴァスコシア・ダック・トーリング・レトリーバーなども好発犬種として知られています。
犬のアジソン病の診断と治療|ACTH刺激試験とホルモン補充
犬のアジソン病の確定診断には、ACTH刺激試験という副腎の反応を調べる検査が用いられます。血液検査でナトリウムが低くカリウムが高い、基礎コルチゾールが低いといった所見が手がかりになります。
Da Silvaら(2026)は982頭の犬で基礎コルチゾールとACTH刺激試験の有用性を評価し、Da Silvaら(2024)は電解質が正常な「非定型」のアジソン病は診断が難しいことを示しました。治療はホルモンの補充が中心で、Langloisら(2026)はアルドステロンを補うDOCP(デスオキシコルチコステロン)注射の効果を報告しています。Sherrodら(2025)によれば、適切に治療・管理すれば多くの犬が普通に暮らせる予後の良い病気です。
犬のアジソン病の日常ケア|ストレス管理と見守り
犬のアジソン病は、生涯のホルモン補充を続けながら、ストレスを避けて体調変化を見守ることが日常ケアの柱です。投薬を欠かさないことが最も大切で、以下のグッズはあくまでその補助になります。
ストレスはアジソンクリーゼの引き金になりやすいため、落ち着ける環境づくりやストレスケアが役立ちます。体調が急に変わることもあるので、留守中の見守りも安心につながります。
犬のアジソン病ケアグッズの選び方|失敗しない4つのポイント
犬のアジソン病ケアは、獣医師の指示による投薬を最優先に、ストレス管理と見守りで支えます。
- ホルモン補充の薬は自己判断で中断せず、毎日欠かさず与える
- ストレスがかかる予定(旅行・手術など)は事前に獣医師へ相談する
- 落ち着ける環境やストレスケアでクリーゼの引き金を減らす
- 見守りカメラや定期検査で体調変化を早めに察知する
まとめ
犬のアジソン病は、元気消失や嘔吐・下痢など他の病気と見分けにくいサインが、良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。ACTH刺激試験で診断がつけば、ホルモン補充で多くの犬が普通に暮らせます。急にぐったりするアジソンクリーゼは緊急事態なのですぐ受診を。日々は投薬を欠かさず、ストレスを避けて見守ることが、愛犬の毎日を守る鍵になります。
参考文献
- Dobosz DA, et al. (2026). Clinical presentation and diagnostic procedures in canine hypoadrenocorticism. Tierarztl Prax Ausg K Kleintiere Heimtiere.
- Tardo AM, et al. (2024). Prevalence of eunatremic, eukalemic hypoadrenocorticism in dogs with signs of chronic gastrointestinal disease and risk of misdiagnosis after previous glucocorticoid administration. J Vet Intern Med.
- Gershony LC, et al. (2020). Genetic characterization of Addison’s disease in Bearded Collies. BMC Genomics.
- Da Silva AJ, et al. (2026). Evaluation of basal cortisol and the adrenocorticotropic hormone stimulation test in 982 dogs undergoing investigation for hypoadrenocorticism. J Vet Intern Med.
- Da Silva AJ, et al. (2024). Comparison between typical primary and eunatraemic, eukalaemic hypoadrenocorticism: 92 cases. Ir Vet J.
- Langlois DK, et al. (2026). Pharmacokinetics and pharmacodynamics of desoxycorticosterone pivalate in dogs with hypoadrenocorticism. J Vet Intern Med.
- Sherrod TN, et al. (2025). Clinical characteristics, treatment, and outcomes of hypoadrenocorticism in dogs. J Small Anim Pract.
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