愛犬が何度もトイレに行く、尿に血が混じる、排尿のときに痛そうに鳴く——それは犬の尿路結石や膀胱炎など、下部尿路疾患のサインかもしれません。
犬の尿路結石は、膀胱や尿道に結晶・結石ができる身近な病気で、再発しやすいのが特徴です。この記事では、2大結石(ストルバイトとシュウ酸カルシウム)の違いから、症状・原因・療法食による治療・水分ケアによる再発予防までを、獣医学研究の根拠とともに解説します。
犬の尿路結石とは|ストルバイトとシュウ酸カルシウム
犬の尿路結石は、尿中のミネラルが結晶化して膀胱や尿道にたまる病気です。結石の種類によって原因も対処法も異なります。Stavroulakiら(2024)の大規模な調査では、犬の結石の多くをストルバイトとシュウ酸カルシウムが占め、犬種・性別・年齢によって生じやすい種類が変わることが報告されています。
2大結石の違い
| 項目 | ストルバイト | シュウ酸カルシウム |
|---|---|---|
| 主な原因 | 細菌感染・尿のアルカリ化 | 尿の酸性化・カルシウム代謝 |
| 療法食で溶ける | ○ 溶解できる | × 外科的に摘出 |
| なりやすい犬 | 雌・細菌性膀胱炎の犬 | 雄・小型犬・中高齢 |
犬の尿路結石・膀胱炎の症状|血尿・頻尿・排尿のサイン
犬の尿路結石で最も多いサインは、血尿・頻尿・排尿時の痛みです。トイレに行く回数が増える、少量ずつしか出ない、陰部を気にしてなめる、といった変化が見られます。
とくに注意したいのが、結石が尿道に詰まって尿がまったく出なくなる尿道閉塞です。半日以上まったく排尿がない場合は、急性腎不全や膀胱破裂の危険があるため、夜間でもすぐに動物病院を受診してください。
多飲多尿など全身症状をともなう場合は、ホルモン疾患が隠れていることもあります。

犬の尿路結石の原因とリスク|犬種・性別・細菌感染
犬の尿路結石のリスクは、犬種・性別・食事・細菌感染など複数の要因が重なって高まります。ストルバイト結石は細菌性膀胱炎に続いて生じることが多く、雌犬に多い傾向があります。
一方でシュウ酸カルシウム結石は、ミニチュア・シュナウザーやヨークシャー・テリアなどの小型犬や雄犬、中高齢で増えることが知られています。Lulichら(2025)は犬種・性別・避妊去勢の有無が結石のできやすさに関わることを示し、Calabròら(2011)もストルバイト結石の管理には食事と感染対策の両面が重要だと報告しています。
犬の尿路結石の診断と治療|療法食で溶かす
ストルバイト結石は、専用の療法食と感染対策で溶かして治療できる場合があります。診断では尿検査・レントゲン・エコーで結石の種類と大きさを確認します。
Dearら(2019)は、尿石溶解用の療法食と抗菌薬の併用でストルバイト結石が溶解したことを報告し、Wingertら(2021)も療法食による内科的溶解の有効性を示しています。さらにHarrisら(2023)は、メチオニンと抗菌薬の組み合わせで感染性ストルバイト結石が溶けた症例を報告しました。ただしシュウ酸カルシウム結石は溶けないため、外科的な摘出が基本になります。
まずは獣医師の指示のもと、結石の種類に合った療法食を選ぶことが治療の第一歩です。
犬の尿路結石の再発予防|水分ケアで尿を薄める
犬の尿路結石の再発予防で最も大切なのは、水分をしっかりとって尿を薄めることです。尿が濃いほど結晶ができやすいため、飲水量を増やす工夫が欠かせません。
Queauら(2020)は、食事のナトリウムを適切に増やすと尿量が増えて結晶の過飽和度が下がることを示し、Bijsmansら(2021)もカリウムの調整が尿の希釈とシュウ酸カルシウムのリスク低下に役立つことを報告しています。家庭では循環式の給水器で飲水意欲を高めたり、ウェットフードやぬるま湯でふやかしたフードで水分を補うのが効果的です。
食事療法とあわせて、クランベリー由来成分やビタミンで尿路環境をサポートするサプリも選択肢になります。
犬の尿路結石ケアグッズの選び方|失敗しない4つのポイント
犬の尿路結石ケアは、結石の種類に合った療法食を軸に、水分と再発予防を組み合わせます。
- 結石の種類を検査で確定してから療法食を選ぶ
- 療法食は獣医師の指示のもとで与える(長期の自己判断はNG)
- 給水器やウェットフードで飲水量を増やす
- サプリはあくまで補助、療法食の代わりにはしない
まとめ
犬の尿路結石は再発しやすい病気ですが、結石の種類を見極めて適切な療法食を使い、水分ケアで尿を薄めれば、再発リスクを大きく下げられます。血尿や頻尿のサインに気づいたら早めに受診し、尿がまったく出ない場合は夜間でも緊急対応を。日々の飲水量を増やす工夫を続けることが、愛犬の尿路を守る何よりの予防になります。
参考文献
- Stavroulaki EM, et al. (2024). Trends in urolith composition and factors associated with different urolith types in dogs from the Republic of Ireland and Northern Ireland between 2010 and 2020. J Small Anim Pract.
- Lulich JP, et al. (2025). Epidemiological Evaluation of Neuter Status, Sex, and Breed in Dogs With Cystine Uroliths. J Vet Intern Med.
- Calabrò S, et al. (2011). Management of struvite uroliths in dogs. Br J Nutr.
- Dear JD, et al. (2019). Evaluation of a dry therapeutic urinary diet and concurrent administration of antimicrobials for struvite cystolith dissolution in dogs. BMC Vet Res.
- Wingert AM, et al. (2021). Efficacy of medical dissolution for suspected struvite cystoliths in dogs. J Vet Intern Med.
- Harris ASM, et al. (2023). d,l-Methionine in combination with amoxicillin-clavulanic acid successfully dissolves spontaneously occurring infection-induced struvite urocystoliths in dogs: a pilot study. J Am Vet Med Assoc.
- Queau Y, et al. (2020). Increasing dietary sodium chloride promotes urine dilution and decreases struvite and calcium oxalate relative supersaturation in healthy dogs and cats. J Anim Physiol Anim Nutr (Berl).
- Bijsmans E, et al. (2021). Increasing Dietary Potassium Chloride Promotes Urine Dilution and Decreases Calcium Oxalate Relative Supersaturation in Healthy Dogs and Cats. Animals (Basel).
あわせて犬の尿失禁の原因とケア用品もご覧ください。

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