くしゃみ・鼻水・目やにが続く——それは「猫風邪」のサインかもしれません。猫風邪は、猫ヘルペスウイルスやカリシウイルスなどが原因で起こる、上部気道(鼻やのど)の感染症の総称です。
とくに子猫や多頭飼いの環境では感染が広がりやすく、重症化すると食欲不振や脱水につながることもあります。猫風邪は早めのケアと、ワクチンによる予防が大切な病気です。この記事では、猫風邪の原因・症状・治療と家庭でのケア、予防のポイントを解説します。
猫風邪とは|原因となるウイルス・病原体
猫風邪は、人の風邪のように複数の病原体が関わる上部気道感染症です。主な原因は猫ヘルペスウイルス(FHV-1)と猫カリシウイルス(FCV)で、クラミジアやマイコプラズマが関わることもあります。Chenら(2026)は、9種類の猫の呼吸器病原体をまとめて検出する検査法を報告しており、複数の病原体が同時に関わることもあります。
ヘルペスウイルスは一度感染すると体内に潜み、ストレスや体調不良のときに再発(再活性化)するのが特徴です。一度かかった猫でも、免疫が落ちると症状がぶり返すことがあります。
猫風邪の症状|くしゃみ・鼻水・目やに
症状は鼻や目、のどに現れ、ウイルスの種類によって特徴が異なります。くしゃみ・鼻水・目やに・結膜炎が代表的で、カリシウイルスでは口内炎やよだれが目立ちます。
- くしゃみ・鼻水・鼻づまり
- 目やに・結膜炎・目が開きにくい
- 発熱・元気がない・食欲不振
- 口内炎・よだれ(カリシウイルスで多い)
- 重症では肺炎・脱水
子猫や高齢猫、多頭飼いの猫では重症化しやすく、食欲不振や脱水に注意が必要です。鼻づまりでにおいがわからなくなると、さらに食欲が落ちる悪循環に陥りやすくなります。
猫風邪の治療|対症療法と抗ウイルス
猫風邪に特効薬はなく、治療は症状をやわらげる対症療法が中心です。Thomasyら(2016)は、猫ヘルペスウイルスに対する抗ウイルス薬や各種化合物の効果を総説で整理しています。またOzkanlarら(2023)は、猫ヘルペスウイルス感染の猫に対する抗ウイルス薬の併用治療を臨床的に評価しています。鼻水や目やにのケア、二次的な細菌感染に対する抗生剤、栄養と水分の補給が治療の柱になります。
L-リジンは効果がある?
猫風邪対策としてL-リジンのサプリがよく知られています。初期の研究では効果を示す報告がありました。Stilesら(2002)は、L-リジンの経口投与でヘルペスによる結膜炎が軽くなったと報告し、Maggsら(2003)も、潜伏感染した猫でウイルスの排出が減ったことを示しています。
一方、その後の集団飼育下の研究や、Bolら(2015)の系統的レビューでは、L-リジンの予防・治療効果は確認されず、有効ではないと結論づけられています。効果を示した報告と否定する報告が混在しており、過度な期待は禁物です。使用を考えるときは獣医師に相談しましょう。
家庭でのケア|保温・栄養・鼻と目のケア
家庭では、保温・栄養補給・鼻と目の清潔を保つことが回復を支えます。食欲が落ちたときはフードを温めて香りを立てたり、高カロリーのペーストで栄養を補ったりします。食欲不振が続くときは猫が食べないときの原因と対策も参考にしてください。

猫風邪のケアに役立つグッズ4選
ここでは、猫風邪のケアと回復をサポートするグッズを紹介します。症状が重い・子猫・食欲がまったくない場合は、早めに動物病院を受診してください。
食欲が落ちたときの栄養補給には、少量で高カロリーのペーストが役立ちます。
目やにが出やすいので、やさしく拭き取れる目元クリーナーがあると便利です。
体を冷やさないよう、もぐって暖まれるあたたかいベッドで安静に過ごさせましょう。
体調をくずしたときは、腸内環境を整えるサプリで内側からのケアも選択肢になります。
猫風邪の予防|ワクチンとストレス管理
猫風邪のいちばんの予防は、混合ワクチンの定期接種です。de Villiersら(2026)は、猫ヘルペスウイルスへの感染状況が、ワクチン接種歴や臨床症状と関連することを報告しています。ワクチンは発症や重症化を抑える効果が期待できます。
新しい猫を迎えるときはしばらく隔離し、多頭飼いでは過密やストレスを避けることも大切です。ストレスはヘルペスウイルスの再発の引き金になるため、落ち着ける環境づくりが予防につながります。
まとめ
猫風邪は、くしゃみ・鼻水・目やにを主な症状とする上部気道の感染症で、ヘルペスウイルスやカリシウイルスが原因となります。特効薬はなく、対症療法と栄養・保温のケアが中心で、よく知られるL-リジンは有効性が科学的に否定的とされています。子猫や多頭飼いでは重症化しやすいため、食欲がない・ぐったりする場合は早めに受診しましょう。もっとも確実な予防はワクチンで、ストレスの少ない環境づくりも再発予防に役立ちます。
参考文献
- de Villiers L, Pulsoni S, Bonfini B, et al. (2026). Tracing feline herpesvirus-1 exposure in domestic cats from Namibia: associations with neutralising antibodies, vaccination, clinical signs, and retroviral status. Veterinary Research Communications.
- Chen CA, Lin HT, Goh SW, et al. (2026). Quantitative multiplex detection of 9 feline respiratory pathogens with enhanced sensitivity. Journal of Veterinary Diagnostic Investigation.
- Thomasy SM, Maggs DJ (2016). A review of antiviral drugs and other compounds with activity against feline herpesvirus type 1. Veterinary Ophthalmology.
- Stiles J, Townsend WM, Rogers QR, et al. (2002). Effect of oral administration of L-lysine on conjunctivitis caused by feline herpesvirus in cats. American Journal of Veterinary Research.
- Maggs DJ, Nasisse MP, Kass PH (2003). Efficacy of oral supplementation with L-lysine in cats latently infected with feline herpesvirus. American Journal of Veterinary Research.
- Bol S, Bunnik EM (2015). Lysine supplementation is not effective for the prevention or treatment of feline herpesvirus 1 infection in cats: a systematic review. BMC Veterinary Research.
- Ozkanlar Y, Ulas N, Sozdutmaz I, et al. (2023). Clinical evaluation of antiviral combination treatment in cats with feline herpesvirus-1 infection. Polish Journal of Veterinary Sciences.
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