「水をよく飲むようになった」「おしっこの量が増えた」「よく食べるのに痩せてきた」——こうしたサインが重なったら、猫の糖尿病かもしれません。糖尿病は、血糖を下げるホルモン「インスリン」が足りない、または効きにくくなることで血糖値が高いままになる病気です。
猫の糖尿病は肥満と深く関わり、中高齢の太った猫で多くみられます。早期に見つけて適切に治療すれば、インスリンが不要になる「寛解」が期待できる病気でもあります。この記事では、猫の糖尿病の症状・原因・診断と治療、日常の管理と予防を解説します。
猫の糖尿病とは|血糖とインスリンのしくみ
食べ物から取り込んだ糖(ブドウ糖)は、インスリンのはたらきで細胞に取り込まれ、エネルギーになります。糖尿病では、このインスリンが不足したり効きにくくなったりして、血液中に糖があふれた状態が続きます。Bugbeeら(2026)は、2026年の猫の糖尿病管理ガイドラインで、診断から治療・モニタリングまでの標準的な進め方を示しています。
猫の糖尿病は人の2型に近い
猫の糖尿病の多くは、肥満などでインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が背景にあり、人の2型糖尿病に近いタイプとされ、生活習慣や体重と深く関わります。
猫の糖尿病の症状|多飲多尿・よく食べるのに痩せる
糖尿病のサインは、飲水量や体重の変化に現れます。水をたくさん飲む・おしっこが増える・よく食べるのに痩せてくる、が代表的なサインです。
- 水を異常に飲む・おしっこの量と回数が増える(多飲多尿)
- 食欲はあるのに体重が減る
- 元気がない・毛づやが悪くなる
- 後ろ足のかかとを地面につけて歩く(糖尿病性神経障害)
- 重症では食欲不振・嘔吐・ぐったり(ケトアシドーシス=緊急)
食欲がなくなり、ぐったりして吐くようになったら、命に関わるケトアシドーシスの可能性があり緊急の受診が必要です。
猫の糖尿病の原因とリスク要因|肥満が最大
猫の糖尿病の最大のリスク要因は肥満です。Clarkら(2021)は、肥満した糖尿病の猫の病態と管理について整理し、体重管理が治療の土台になることを示しています。このほか、高齢・オス・運動不足・ステロイド薬の使用・膵炎・先端巨大症なども関わります。
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猫の糖尿病の診断|血糖値とフルクトサミン
診断では、血糖値や尿糖に加えて、過去1〜2週間の血糖の平均を反映する「フルクトサミン」を測ります。猫は病院での緊張だけでも一時的に血糖が上がるため、ストレス性の高血糖と見分けることが大切です。Bugbeeら(2026)のガイドラインでも、複数の指標を組み合わせた診断が推奨されています。
猫の糖尿病の治療|インスリンと低糖質フード、そして寛解
治療の柱は、インスリン注射と食事療法です。Linariら(2022)は、猫の糖尿病に用いるインスリン(グラルギン)の治療効果を検討しています。食事は、糖の吸収をゆるやかにする低炭水化物・高たんぱくの療法食が基本で、Jørgensenら(2026)は、太った糖尿病の猫でカロリー制限と専用食による減量が血糖管理に役立つことを無作為化試験で示しています。
早期にしっかり血糖をコントロールすると、インスリンが不要になる「寛解」が得られることがあります。近年は、尿に糖を出す新しい飲み薬(SGLT2阻害薬)も登場しています。Laiら(2026)は、猫のSGLT2阻害薬の市販後の安全性を調査しています。治療法は獣医師と相談して選びましょう。
インスリン治療では低血糖に注意
インスリンが効きすぎると、血糖が下がりすぎる低血糖になることがあります。ふらつき・けいれん・ぐったりは低血糖のサインで、緊急の対応が必要です。Lamら(2026)は、低血糖時のグルカゴン投与について検討しています。対処法は事前に獣医師に確認しておきましょう。
猫の糖尿病ケアにおすすめの低糖質フード・グッズ4選
ここでは、糖尿病の食事管理に役立つ低糖質の療法食や、規則的な食事を助けるグッズを紹介します。インスリンや療法食は必ず獣医師の指示のもとで使ってください。
まずは血糖コントロールの土台となる、低炭水化物・高たんぱくの糖尿病用療法食です。
食欲が落ちたときや水分も摂らせたいときは、同シリーズのウェットが便利です。
インスリンと食事のタイミングを一定に保つには、時間を設定できる自動給餌器が役立ちます。
ご褒美には、糖質が少なく高たんぱくのささみおやつが向いています。
猫の糖尿病の予防と日常管理|体重管理が鍵
糖尿病を防ぐいちばんの対策は、適正体重を保つことです。肥満を避け、適度に遊んで運動させ、規則的な食事を心がけましょう。すでに治療中の猫も、体重管理と決まった時間の食事が血糖の安定につながります。
まとめ
猫の糖尿病は、多飲多尿・よく食べるのに痩せるといったサインで気づかれる、肥満と深く関わる病気です。治療の柱はインスリンと低炭水化物・高たんぱくの食事で、早期にコントロールできればインスリンが不要になる「寛解」も期待できます。一方でインスリン治療には低血糖の注意も必要です。日ごろから適正体重を保ち、気になるサインがあれば早めに動物病院で血糖やフルクトサミンを調べてもらいましょう。
参考文献
- Bugbee A, Rucinsky R, Alvarez E, et al. (2026). 2026 AAHA Diabetes Management Guidelines for Cats. Journal of the American Animal Hospital Association.
- Clark M, Hoenig M (2021). Feline comorbidities: Pathophysiology and management of the obese diabetic cat. Journal of Feline Medicine and Surgery.
- Linari G, Fleeman L, Gilor C, et al. (2022). Insulin glargine 300 U/ml for the treatment of feline diabetes mellitus. Journal of Feline Medicine and Surgery.
- Jorgensen FK, Mohanty A, Kieler IN, et al. (2026). A two-center, randomized controlled trial to determine the effect of 12 weeks of caloric restriction with a novel diet in overweight cats with diabetes mellitus. Journal of Veterinary Internal Medicine.
- Lai X, Chen M, Huang Y, et al. (2026). Post-marketing safety monitoring of sodium-glucose cotransporter 2 inhibitors for diabetes in cats. Journal of Veterinary Internal Medicine.
- Lam JPM, Justus-Heale O, Snead E (2026). Comparing the efficacy of transmucosal and subcutaneous glucagon administration in response to insulin-induced hypoglycemia in healthy cats. Journal of Feline Medicine and Surgery.
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