【獣医師監修】猫のかかりやすい病気|ペット保険会社データで見る猫種別リスク

猫のかかりやすい病気を診察する獣医師 猫の科学

猫のかかりやすい病気を知ることは、早期発見と予防の第一歩です。日本最大のペット保険会社アニコム損害保険が発表した「家庭どうぶつ白書2025」によると、猫のかかりやすい病気の上位は消化器疾患(14.5%)・泌尿器疾患(11.4%)・皮膚疾患(8.0%)であることが258,436頭のデータからわかっています。さらに同白書では、混血猫・スコティッシュフォールド・マンチカンなど猫種ごとに特有のリスクがあることも明らかになっています。本記事では、ペット保険データと最新の学術論文を組み合わせて、猫のかかりやすい病気を疾患別・猫種別に詳しく解説します。

  1. 猫がかかりやすい病気の統計(アニコム白書2025)
  2. 猫がかかりやすい病気5選(疾患別解説)
    1. ①消化器疾患(請求割合14.5%)
    2. ②泌尿器疾患(請求割合11.4%)
    3. ③皮膚疾患(8.0%)・全身性の疾患(7.5%)
    4. ④循環器疾患(2.5%)
    5. ⑤歯・口腔疾患(2.3%)
  3. 猫種別のかかりやすい病気|アニコム白書データ(2025年版)
    1. ①混血猫(保険加入71,360頭)|歯周病・肝酵素上昇・便秘に注意
    2. ②スコティッシュ・フォールド(保険加入35,902頭)|関節炎・弁膜症・心筋症に注意
    3. ③マンチカン(保険加入21,131頭)|膀胱結石・眼科疾患・FLUTDに注意
    4. ④アメリカン・ショートヘアー(保険加入19,517頭)|腎結石・心筋症・弁膜症に注意
    5. ⑤ノルウェージャン・フォレスト・キャット(保険加入13,162頭)|糖尿病・尿道閉塞・FLUTDに注意
    6. ⑥ラグドール(保険加入11,442頭)|疥癬・耳疥癬・呼吸器疾患に注意
    7. ⑦ブリティッシュ・ショートヘアー(保険加入11,646頭)|外耳炎・爪の外傷・耳の痒みに注意
    8. ⑧ミヌエット(保険加入8,003頭)|皮膚糸状菌症・目やに・呼吸器疾患に注意
    9. ⑨サイベリアン(保険加入7,404頭)|耳疥癬・皮膚糸状菌症・疥癬に注意
    10. ⑩ロシアンブルー(保険加入6,512頭)|糖尿病・肝酵素上昇・肝胆道系疾患に注意
  4. まとめ
  5. 参考文献
  6. 関連記事

猫がかかりやすい病気の統計(アニコム白書2025)

アニコム損害保険「家庭どうぶつ白書2025」(猫258,436頭・0〜12歳)によると、疾患カテゴリ別の保険請求割合は以下の通りです。犬と比べると泌尿器疾患の割合が高く(犬6.0% vs 猫11.4%)、猫特有の泌尿器リスクが保険データにも明確に現れています。

疾患カテゴリ犬(参考)
消化器疾患14.5%25.6%
泌尿器疾患11.4%6.0%
皮膚疾患8.0%24.8%
全身性の疾患7.5%11.9%
眼の疾患6.1%9.9%
呼吸器疾患5.0%5.0%
耳の疾患2.7%15.4%
循環器疾患2.5%4.6%
歯・口腔疾患2.3%5.7%
筋骨格疾患2.0%10.5%

猫がかかりやすい病気5選(疾患別解説)

①消化器疾患(請求割合14.5%)

消化器疾患は猫のかかりやすい病気の中で最も請求割合が高く、慢性腸症(IBD)・急性胃腸炎・腸リンパ腫・消化管異物などが主な疾患です。慢性腸症では体重減少・慢性嘔吐・下痢が長期にわたって続くことが多く、Park ら(2026)は慢性腸症の猫において血清コバラミン(ビタミンB12)濃度が組織の炎症重症度・転帰と相関することを報告しており、栄養管理を含む継続的なモニタリングが重要です。食欲不振・慢性的な嘔吐・体重減少が2週間以上続く場合は早めに受診しましょう。

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②泌尿器疾患(請求割合11.4%)

猫の泌尿器疾患は下部尿路疾患(FLUTD)・膀胱炎・尿石症・慢性腎臓病(CKD)などを含み、猫のかかりやすい病気の中でも猫特有のリスクが際立つカテゴリです。Zhang ら(2026)は保険データを用いたFLUTDの後ろ向き研究で、FLUTD猫の予後は早期診断・適切な食事管理・ストレス軽減によって大きく改善できることを示しています。特に室内飼育・肥満・ストレス・飲水量の少なさがFLUTDのリスク因子であり、ウェットフードの活用や複数の水飲み場の設置が予防に有効です。

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③皮膚疾患(8.0%)・全身性の疾患(7.5%)

猫の皮膚疾患では脱毛・皮膚糸状菌症(リングワーム)・アレルギー性皮膚炎・過剰グルーミングが多く見られます。全身性の疾患として特に重要なのが甲状腺機能亢進症です。Nelson ら(2025)は環境中の化学物質(難燃剤・PCBsなど)が猫の甲状腺機能亢進症リスクを高める可能性を報告しており、中高齢の猫(7歳以上)では急激な体重減少・食欲亢進・落ち着きのなさが見られたら甲状腺ホルモン検査を受けることが推奨されます。

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④循環器疾患(2.5%)

猫の循環器疾患では肥大型心筋症(HCM)が代表的で、猫の心疾患の中で最も多い病態です。Varlik ら(2026)はHCMの重症度評価に左心房・左心室連関指数が有用であることを報告しており、定期的なエコー検査が早期発見の鍵です。またColeman ら(2026)は心臓病と腎臓病の合併が猫に多く見られ、両疾患を同時管理することが生存期間の延長につながることを示しています。スコティッシュフォールドなど特定猫種では若齢からHCMスクリーニングが推奨されます。

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⑤歯・口腔疾患(2.3%)

猫のかかりやすい病気として見落とされがちなのが歯・口腔疾患です。歯周病・歯吸収病巣(FORL)・慢性口腔炎(猫の難治性口内炎)が代表的な疾患です。Hendy ら(2026)は犬猫の歯周病の包括的なレビューで、定期的な歯科処置と日常的なデンタルケアが歯周病の進行を大幅に遅らせることを示しています。猫は口の痛みを隠す傾向があるため、食欲低下・よだれ・口臭・片側だけで噛む様子が見られたら早急に歯科検診を受けましょう。

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猫種別のかかりやすい病気|アニコム白書データ(2025年版)

アニコム損保「家庭どうぶつ白書2025」には、保険加入猫10猫種ごとの疾患リスクデータが収録されています。オッズ比(OR)は「他猫種と比べて何倍かかりやすいか」を統計的に示した値です(0〜12歳対象)。10猫種すべてのデータを保険加入頭数の多い順(=飼育頭数が多い順)に紹介します。

猫種保険加入頭数かかりやすい疾患(オッズ比)
混血猫71,360①歯周病・歯肉炎(2.12倍) ②肝酵素上昇(原因未定)(2.02倍) ③便秘(巨大結腸症含む)(1.49倍)
スコティッシュ・フォールド35,902①関節炎(4.49倍) ②弁膜症(2.26倍) ③心筋症(2.19倍)
マンチカン21,131①膀胱結石(1.86倍) ②眼瞼炎(1.47倍) ③目やに(原因未定)(1.47倍)
アメリカン・ショートヘアー19,517①腎結石(2.46倍) ②心筋症(1.81倍) ③弁膜症(1.64倍)
ノルウェージャン・フォレスト・キャット13,162①糖尿病(2.53倍) ②尿道閉塞(2.09倍) ③FLUTD・下部尿路疾患(1.74倍)
ラグドール11,442①疥癬(2.22倍) ②耳疥癬・ミミヒゼンダニ症(2.21倍) ③くしゃみ・鼻汁(1.68倍)
ブリティッシュ・ショートヘアー11,646①細菌性外耳炎(2.09倍) ②爪の外傷(1.91倍) ③耳の痒み(1.87倍)
ミヌエット8,003①皮膚糸状菌症(2.55倍) ②目やに(原因未定)(2.28倍) ③呼吸器疾患(1.95倍)
サイベリアン7,404①耳疥癬・ミミヒゼンダニ症(2.12倍) ②皮膚糸状菌症(2.12倍) ③疥癬(2.08倍)
ロシアンブルー6,512①糖尿病(2.36倍) ②肝酵素上昇(原因未定)(1.87倍) ③肝・胆道系疾患(1.83倍)

※ オッズ比は同白書のデータに基づく(猫全体平均比)。以下、各猫種のリスクを詳しく解説します。

①混血猫(保険加入71,360頭)|歯周病・肝酵素上昇・便秘に注意

混血猫(いわゆる雑種猫)は日本で最も多く飼われている猫で、保険加入頭数も71,360頭と圧倒的です。歯周病・歯肉炎のリスクが他猫種の2.12倍と高く、定期的な歯磨きと口腔ケアが重要です。肝酵素上昇(2.02倍)は肝臓疾患の初期サインとなることがあるため、定期的な血液検査での早期発見を心がけましょう。便秘・巨大結腸症(1.49倍)も見られ、食物繊維と水分摂取の工夫が予防につながります。

②スコティッシュ・フォールド(保険加入35,902頭)|関節炎・弁膜症・心筋症に注意

スコティッシュ・フォールドは独特の折れ耳が人気ですが、関節炎のリスクが他猫種の4.49倍という際立って高いリスクを持ちます。折れ耳の遺伝子(Fd遺伝子)が軟骨・骨の異常発育を引き起こすため、全身の関節に慢性的な痛みと変形が生じやすいです。弁膜症(2.26倍)と心筋症(2.19倍)も多く、定期的な心臓エコー検査が推奨されます。

③マンチカン(保険加入21,131頭)|膀胱結石・眼科疾患・FLUTDに注意

マンチカンは短い脚が特徴の猫種で、膀胱結石のリスクが1.86倍と高めです。水分摂取量を増やすウェットフードの活用や、泌尿器ケアフードの使用が予防に有効です。眼瞼炎や目やに(各1.47倍)など眼科疾患も多く、定期的な目のチェックが必要です。FLUTD(下部尿路疾患:1.43倍)は雄猫での尿道閉塞リスクも伴うため注意が必要です。

④アメリカン・ショートヘアー(保険加入19,517頭)|腎結石・心筋症・弁膜症に注意

アメリカン・ショートヘアーは腎結石のリスクが2.46倍と高い猫種です。腎臓疾患全般のリスクが高いため、水分摂取の促進と定期的な尿・血液検査が重要です。心筋症(1.81倍)・弁膜症(1.64倍)と循環器系の疾患も多く、中高齢以降は心臓エコー検査を定期的に受けることが推奨されます。

⑤ノルウェージャン・フォレスト・キャット(保険加入13,162頭)|糖尿病・尿道閉塞・FLUTDに注意

ノルウェージャン・フォレスト・キャットは糖尿病のリスクが2.53倍と高い大型猫種です。肥満が糖尿病を強く促進するため、適切な体重管理が最重要です。尿道閉塞(2.09倍)とFLUTD(1.74倍)も多く、特に雄猫では尿道閉塞は命に関わる緊急事態となりうるため、排尿困難のサインに即座に対応することが重要です。

⑥ラグドール(保険加入11,442頭)|疥癬・耳疥癬・呼吸器疾患に注意

ラグドールは疥癬(2.22倍)・耳疥癬(2.21倍)と外部寄生虫感染のリスクが他猫種より高い特徴があります。屋外への外出がある場合や多頭飼育環境では特に注意が必要です。くしゃみ・鼻汁(1.68倍)などの呼吸器症状も多く見られます。室内飼育管理と定期的な寄生虫予防が重要な猫種です。

⑦ブリティッシュ・ショートヘアー(保険加入11,646頭)|外耳炎・爪の外傷・耳の痒みに注意

ブリティッシュ・ショートヘアーは細菌性外耳炎のリスクが2.09倍で、耳の形状から汚れがたまりやすい傾向があります。定期的な耳掃除と外耳道の清潔維持が重要です。爪の外傷(1.91倍)・耳の痒み(1.87倍)も多く見られます。活発に動くため、爪の定期的なケアも欠かせません。

⑧ミヌエット(保険加入8,003頭)|皮膚糸状菌症・目やに・呼吸器疾患に注意

ミヌエット(旧ナポレオン)はマンチカンとペルシャの交配種で、皮膚糸状菌症(白癬)のリスクが2.55倍と高い猫種です。長毛・短足の体型から被毛管理が難しく、真菌感染の早期発見が重要です。目やに(2.28倍)と呼吸器疾患(1.95倍)も多く、短頭種の特徴も持つため定期的な健康チェックが推奨されます。

⑨サイベリアン(保険加入7,404頭)|耳疥癬・皮膚糸状菌症・疥癬に注意

サイベリアンは耳疥癬(2.12倍)・皮膚糸状菌症(2.12倍)・疥癬(2.08倍)と外部寄生虫・真菌感染全般に高いリスクを持ちます。主にペットショップや繁殖施設での集団飼育環境で感染することが多いため、迎え入れ時の獣医師によるチェックが重要です。定期的な寄生虫予防薬の使用が効果的です。

⑩ロシアンブルー(保険加入6,512頭)|糖尿病・肝酵素上昇・肝胆道系疾患に注意

ロシアンブルーは糖尿病のリスクが2.36倍と高く、肥満との関連が深い猫種です。ストレスに敏感な気質から過食になりやすいため、適切な食事管理が重要です。肝酵素上昇(1.87倍)・肝胆道系疾患(1.83倍)も多く見られ、定期的な血液検査での肝機能モニタリングが推奨されます。

まとめ

  • アニコム白書2025によると、猫のかかりやすい病気の上位は消化器疾患(14.5%)・泌尿器疾患(11.4%)・皮膚疾患(8.0%)
  • 猫種ごとに特有のリスクがあり、スコティッシュフォールドは関節炎・心筋症、マンチカンは泌尿器疾患、混血猫は歯周病・肝臓疾患に要注意
  • 猫は体調不良を隠す習性があるため、日常のボディチェックと年1〜2回の健康診断が早期発見の鍵
  • 泌尿器疾患の予防にはウェットフードや飲水量確保、歯周病予防には日常のデンタルケアが有効

参考文献

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