「最近、水をよく飲むようになった」「おしっこの回数が増えた気がする」——こうした症状が続く場合、猫 腎臓病(慢性腎臓病)のサインである可能性があります。猫の慢性腎臓病(CKD)は高齢猫に最も多い慢性疾患のひとつで、15歳以上の猫では約30〜40%が罹患しているとされています。本記事では、獣医師が最新論文をもとに、猫の腎臓病の仕組みから早期発見のポイント、食事管理・サプリ選びまでを科学的に解説します。
猫の慢性腎臓病(CKD)とは?
猫の慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が不可逆的・進行性に低下していく病気です。腎臓は体内の老廃物をろ過し、水分・電解質・酸塩基バランスを保つ重要な臓器ですが、CKD(慢性腎臓病)では腎組織が徐々に線維化・萎縮し機能を失っていきます。Sparkes(2016)らによるISFMコンセンサスガイドラインは猫のCKD管理の国際標準となっており、このガイドラインでは猫のCKDをIRIS(国際腎臓関心学会)の病期分類(ステージ1〜4)に基づいて管理することが推奨されています。
高齢猫の3頭に1頭以上が罹患
猫は腎臓の予備能力が低く、加齢とともに腎機能が低下しやすい動物です。7歳以上の猫の約10%、15歳以上では約30〜40%が慢性腎臓病を抱えているとされており、高齢猫では最も警戒すべき疾患のひとつです。腎臓は機能が75%以上失われるまで明確な症状が現れにくいことが知られており、定期的な検査による早期発見が特に重要です。
CKDが進行するメカニズム
CKDでは健常なネフロン(腎臓の機能単位)が次第に失われ、残ったネフロンが代償的に過負荷になることで、さらなるダメージが生じる悪循環に陥ります。リン(リン酸塩)の蓄積は腎臓の線維化を加速させる主要因のひとつであり、食事によるリン制限が猫 腎臓病の管理の中心となります。また、尿細管間質性線維化・糸球体硬化・慢性低酸素が組み合わさって病態が進行します。
早期発見のカギ|SDMAと症状チェックリスト
猫の腎臓病は早期段階(ステージ1・2)では症状が軽微なため、定期検査によるバイオマーカーの測定が重要です。近年注目されているのが、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)という新しい腎機能マーカーです。
SDMAは従来のクレアチニンより早く異常を検出
Hall(2014)らの研究では、SDMAはクレアチニンよりも平均17ヶ月早く猫の腎臓病を検出できることが示されました。SDMAは筋肉量の影響を受けにくいため、痩せた猫・老猫でも正確に腎機能を反映できます。7歳以上の猫では、年1〜2回のSDMAを含む血液・尿検査を推奨します。
自宅でできる早期サインのチェックリスト
以下のサインが続く場合は、早めに動物病院へ。
- 水を飲む量が明らかに増えた(多飲)
- おしっこの回数・量が増えた(多尿)
- 食欲が落ちて体重が減ってきた
- 毛並みが悪くなった・毛づくろいが減った
- 嘔吐が増えた(週1回以上)
- 口臭がアンモニア臭・アルカリ臭になった
猫 腎臓病の初期ステージでは、これらのサインが非常に軽微なことが多く、飼い主が気付きにくいのが実情です。「なんとなく元気がない」「なんとなく痩せてきた」という漠然とした変化を見逃さないことが、早期発見の第一歩です。
科学的根拠のある食事管理
猫の腎臓病の進行を抑えるうえで、食事管理は薬物療法と並ぶ最重要の介入手段です。特にリン制限と水分摂取量の確保は、複数の臨床研究で有効性が確認されています。
腎臓療法食(リン制限・低タンパク食)の効果
Ross(2006)らの無作為化臨床試験では、腎臓療法食(低リン・低タンパク)を与えたCKD猫は一般食群と比較して、生存期間が有意に延長し、尿毒症症状の発症が遅れることが示されました。IRISガイドラインではステージ2以降で腎臓療法食への切り替えを推奨しており、獣医師の指導のもとで導入することが大切です。
タンパク質制限は”適切な範囲”で
腎臓療法食はタンパク質が制限されていますが、猫は必須アミノ酸(タウリン・アルギニンなど)を食事から摂取する必要があります。極端なタンパク制限は筋肉量の低下(サルコペニア)を招くため、消化率の高い良質な動物性タンパクを適切な量で摂取することが重要です。療法食を嫌がる猫では、段階的に切り替えるか、ウェット療法食から始めるのが有効です。
水分摂取を増やす科学的な方法
猫は砂漠由来の動物であり、食事から水分を摂る習性があります。ドライフードのみの食事は慢性的な軽度脱水を招きやすく、腎臓への負担を増大させます。腎臓病の管理において、水分摂取量の確保は特に重要です。
ウェットフード(水分含有量70〜80%)への切り替え、または混合給餌は、猫の総水分摂取量を大幅に増やす最も効果的な方法のひとつです。また、水飲み器については、流水式(自動給水器)を使うことで猫の飲水意欲が高まることが臨床的に知られています。複数箇所に水皿を設置する、食器を食事場所から離した場所に置くなどの工夫も有効です。
サプリメントのエビデンス
慢性腎臓病(CKD)の補助管理として、いくつかのサプリメントに科学的根拠が蓄積されています。特にリン吸着剤とオメガ3脂肪酸は、獣医師の指導のもとで活用できます。
リン吸着サプリの仕組みと選び方
食事だけでリンを十分に制限できない場合、リン吸着剤(炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、キトサン、炭酸ランタンなど)が補助的に使用されます。これらは食事中のリンを消化管内で結合して吸収を抑制する仕組みであり、必ず食事と同時または食後すぐに与えることが効果発揮の条件です。無味無臭のパウダータイプが猫には使いやすく、フードに混ぜて与えられます。
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)の腎保護効果
Plantinga(2005)らの後ろ向き研究では、腎臓対応食を与えられたCKD猫は維持食群に比べて有意に長い生存期間を示し、食事内容が予後に大きく影響することが示されました。オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は腎臓の炎症を抑制し腎血流を改善する作用が期待されており、猫用のフィッシュオイルサプリとして市販されています。
IRIS病期分類に基づくケアのポイント
IRISは猫の腎臓病をクレアチニン値・SDMA・タンパク尿・血圧に基づいて4段階に分類しています。ステージに応じて対応が異なるため、かかりつけ獣医師による定期的なステージ評価が重要です。
| ステージ | クレアチニン目安 | 対応のポイント |
|---|---|---|
| ステージ1 | 正常(<140μmol/L) | 定期検診・飲水促進・食事管理開始 |
| ステージ2 | 140〜249μmol/L | 療法食開始・リン制限・サプリ検討 |
| ステージ3 | 250〜439μmol/L | 集中的な食事管理・貧血・高血圧への対応 |
| ステージ4 | ≥440μmol/L | 支持療法・QOL重視のケア |
猫 腎臓病はステージが上がるほど管理が複雑になりますが、早期(ステージ1〜2)から適切なケアを始めることで、進行を大幅に遅らせることが可能です。
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猫の泌尿器系の健康管理については猫の泌尿器疾患(FLUTD・膀胱炎)の科学もあわせてご覧ください。腎臓病と膀胱炎はどちらも水分摂取と食事管理が重要な疾患です。
まとめ
猫の腎臓病(慢性腎臓病)は、早期発見と適切な食事・サプリ管理によって進行を抑え、猫のQOLを長期間保つことができる病気です。
- 7歳以上の猫は半年〜1年に1回、SDMA含む定期検査を
- 多飲・多尿・体重減少などのサインを見逃さない
- IRISステージに応じた腎臓療法食(低リン・適度なタンパク制限)への切り替え
- ウェットフードや自動給水器で水分摂取量を増やす
- 必要に応じてリン吸着サプリ・オメガ3脂肪酸を活用
- 獣医師との定期的な連携でステージを管理する
「うちの猫はまだ元気そう」と思っていても、猫 腎臓病は症状が出る頃にはすでに進行していることが多いため、定期健診による先手のケアが最大の防御策です。
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参考文献
- Sparkes AH, Caney S, Chalhoub S, et al. (2016). ISFM Consensus Guidelines on the Diagnosis and Management of Feline Chronic Kidney Disease. Journal of Feline Medicine and Surgery, 18(3), 219–239.
- Hall JA, Yerramilli M, Obare E, Yerramilli M, Jewell DE. (2014). Comparison of serum concentrations of symmetric dimethylarginine and creatinine as kidney function biomarkers in cats with chronic kidney disease. Journal of Veterinary Internal Medicine, 28(6), 1676–1683.
- Ross SJ, Osborne CA, Kirk CA, et al. (2006). Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic kidney disease in cats. Journal of the American Veterinary Medical Association, 229(6), 949–957.
- Plantinga EA, Everts H, Kastelein AM, Beynen AC. (2005). Retrospective study of the survival of cats with acquired chronic renal insufficiency offered different commercial diets. Veterinary Record, 157(7), 185–187.
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