愛犬が突然倒れ、手足をバタバタさせる——そんな発作の場面を目撃した飼い主の方は、どれほど恐ろしかったことでしょう。犬 てんかんは犬に最も多く見られる神経疾患のひとつで、約0.75%の犬が罹患すると言われています。しかし、適切な知識があれば、発作の引き金を減らし、薬物療法と並行したサプリメントで発作頻度を抑えることが可能です。
本記事では、犬 てんかんの発作の種類・引き金・応急処置を最新の論文に基づいて解説するとともに、中鎖脂肪酸(MCT)オイルやDHAサプリの科学的根拠をわかりやすくお伝えします。
犬のてんかんとは?発作の種類と分類
犬 てんかん には、原因によって3つのタイプがあります。国際獣医神経学会(IVETF)の分類に基づき整理すると以下のとおりです。
特発性てんかん(遺伝性てんかん)
最も多いタイプで、脳に構造的な異常はなく、遺伝的素因が関与します。ボーダー・コリー、ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバー、ジャーマン・シェパードなどで高発生率が報告されており、初発年齢は通常1〜5歳です。
構造的てんかん
脳腫瘍、脳炎、水頭症、脳梗塞など、脳に器質的な病変があることで発作が起きるタイプです。高齢での発症、または急速な悪化が見られる場合は構造的原因を疑います。
反応性てんかん(症候性)
低血糖、肝性脳症、電解質異常、中毒(キシリトール・チョコレート等)など、全身性の代謝異常が引き金となる発作です。原因を取り除けば発作が止まる可能性があります。
犬のてんかん発作の引き金(トリガー)を科学で解明
Forsgård ら(2019)が行った研究では、特発性てんかんを持つ犬の74%に発作を引き起こしやすい「引き金」が確認されました。最も多く報告されたトリガーは以下のとおりです。
- 来客・環境の変化(30%)
- 生活状況の変化(引越し・ルーティンの変更)(27%)
- 睡眠パターンの変化(24%)
- 気温上昇・暑さ(24%)
- ホルモン変化(未去勢オス33%、未避妊メス42%)
これらの結果は人間のてんかんにおける引き金パターンと類似しており、ストレス管理と規則正しい生活が犬 てんかんの発作頻度を下げる可能性を示唆しています。
日常生活でできるトリガー管理
発作のトリガーを把握してコントロールすることが、犬のてんかん管理において非常に重要です。以下の対策を日常的に実践しましょう。
- 来客時は静かな部屋に移動させる
- 散歩・食事・就寝のルーティンを一定に保つ
- 夏場の昼間の運動は避け、室内を涼しく保つ
- 未去勢・未避妊の場合は獣医師と相談する
発作中・発作後の応急処置
発作中に最も重要なのは「犬を守ること」と「発作時間を計ること」です。5分以上続く発作(重積状態)は生命の危機であるため、直ちに受診が必要です。
発作中にすべきこと:
- 落ち着いた声でやさしく話しかける(刺激を最小限に)
- スマートフォンで動画撮影する(獣医師への情報提供のため)
- 床に敷物を敷き、周囲の危険物を遠ざける
- 発作の開始時刻・持続時間・様子を記録する
発作中にすべきでないこと:
- 口に手を入れない(犬はてんかん発作中に舌を飲み込まない)
- 体を強く押さえつけない
- 水を飲ませようとしない
受診のタイミング:発作が5分以上続く・24時間以内に2回以上発作が起きる・発作後に意識が戻らない場合は、ただちに救急受診してください。
中鎖脂肪酸(MCT)オイルの科学的根拠
MCTオイルは、犬 てんかんの補助療法として最も科学的な根拠が蓄積されているサプリメントです。
ランダム化比較試験(RCT)による証拠
Berk ら(2020)は、薬剤抵抗性の特発性てんかんを持つ28頭の犬を対象に、二重盲検・クロスオーバーRCTを実施しました。MCT補給期において、発作頻度の中央値が有意に減少(P=0.02)し、運動失調・鎮静の改善とQOLの有意な向上(P<0.001)が認められました。
さらに、Molina ら(2020)の前向き臨床試験では、6.5%MCTオイルを含む食事を与えた21頭の犬で、発作頻度が平均32%・発作発生日数が42%有意に減少しました(Veterinary Record)。76.2%の犬で発作頻度が改善し、42.9%では50%以上の減少を達成しました。
MCTオイルの作用メカニズム
MCT(中鎖脂肪酸)はカプリル酸(C8)・カプリン酸(C10)を主成分とし、腸で素早く吸収されてケトン体に変換されます。ケトン体は血液脳関門を容易に通過してニューロンのエネルギー源となり、AMPA受容体を阻害することで抗けいれん作用を発揮すると考えられています。
使用量の目安:体重1kgあたり約1mL/日から開始し、消化器への副作用(軟便・嘔吐)が出る場合は少量から徐々に増量してください。必ず獣医師に相談してから始めましょう。
DHAサプリの科学的根拠
DHAは神経細胞膜の構成成分として、犬 てんかんの神経保護に重要な役割を果たす可能性があります。
Yonezawa ら(2023)のパイロット研究では、特発性てんかんの犬6頭に対し体重1kgあたり69〜166mgの高用量DHAを補給したところ、全例で2〜3か月以内に発作頻度が50%以上減少し、3頭では月0〜1回まで低下しました。血液検査上の有害事象は認められませんでした。
DHA(ドコサヘキサエン酸)はオメガ3系脂肪酸の一種で、神経細胞膜の流動性を高め、炎症性サイトカインを抑制することで神経の過剰興奮を和らげると考えられています。
犬 てんかん ケアに役立つサプリとグッズ
薬物療法と並行して、サプリとグッズで犬 てんかんの日常管理をサポートしましょう。以下は研究で使用された成分を含む製品の例です。

獣医師監修の犬用総合ヘルスオイル。MCTオイル・EPA・DHA・オメガ3脂肪酸を配合し、ごはんに数滴かけるだけで使えます。研究で使用される中鎖脂肪酸を日常的にサポートします。

100%マグロ由来のDHA・EPA配合。ごはんに3滴からかけるだけで神経細胞膜の健康をサポートします。においが少ない製法で食が細い犬にも。

獣医師評価製品。GABA・テアニン・カキエキスを配合した犬用ふりかけタイプのサプリメント。てんかんのトリガーとなるストレス・不安を和らげる成分を含み、毎日のごはんにかけて使用できます。
まとめ:犬のてんかんと正しく向き合うために
犬 てんかんは、正しい知識と適切なサポートで発作頻度を管理できる可能性があります。本記事のポイントをまとめます。
- 特発性・構造的・反応性の3種類があり、原因によって治療方針が異なる
- 発作のトリガーはストレス・生活変化・睡眠・気温など(Forsgård ら 2019)
- MCTオイルは複数のRCTで発作頻度を30〜42%減少させた(Berk ら 2020、Molina ら 2020)
- 高用量DHAで全例に発作50%以上減少の報告
- サプリは必ず獣医師の指導のもとで開始すること
犬 てんかんの診断・治療方針の変更は必ず獣医師に相談してください。本記事は情報提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。
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参考文献
- Forsgård JA, et al. (2019). Seizure-precipitating factors in dogs with idiopathic epilepsy. Journal of Veterinary Internal Medicine, 33(2), 701–707.
- Berk BA, et al. (2020). A multicenter randomized controlled trial of medium-chain triglyceride dietary supplementation on epilepsy in dogs. Journal of Veterinary Internal Medicine, 34(3), 1248–1259.
- Molina J, et al. (2020). Efficacy of medium chain triglyceride oil dietary supplementation in reducing seizure frequency in dogs with idiopathic epilepsy without cluster seizures. Veterinary Record.
- Yonezawa T, et al. (2023). Effects of high-dose docosahexaenoic acid supplementation as an add-on therapy for canine idiopathic epilepsy: A pilot study. Open Veterinary Journal, 13(7), 942–947.



