「急に抱っこを嫌がるようになった」「段差を上りたがらない」「後ろ足がふらつく・立てない」——こうしたサインが急に現れたら、椎間板ヘルニアかもしれません。椎間板ヘルニアは、背骨のクッションである椎間板が飛び出して脊髄を圧迫し、痛みやマヒを引き起こす病気です。
とくにダックスフンドなど胴が長い犬種で多く、重症では数時間の対応が回復を左右することもあります。軽症なら安静と内科治療で回復することも多い一方、後ろ足が動かない・排尿できない場合は緊急の対応が必要です。この記事では、犬の椎間板ヘルニアの症状・重症度・治療・リハビリと、再発を防ぐ予防ケアを解説します。
犬の椎間板ヘルニア(IVDD)とは
背骨は小さな骨(椎骨)が連なってできており、その間で衝撃を吸収するクッションが椎間板です。椎間板ヘルニアは、このクッションが変性して飛び出し、すぐ上を通る脊髄を圧迫することで起こります。Mooreら(2026)は、犬の胸腰部の椎間板ヘルニアに対する外科治療について、北米・欧州の専門医の診療実態を調査しています。
椎間板の役割と脊髄が圧迫されるしくみ
脊髄は脳と全身をつなぐ神経の通り道で、圧迫されると痛みや手足のマヒが生じます。圧迫の程度と時間が長いほど神経のダメージは大きくなり、回復が難しくなります。
犬の椎間板ヘルニアの症状と重症度(グレード)
症状は、軽い痛みから完全なマヒまで段階的に進みます。一般にグレード1〜5で重症度を分け、数字が大きいほど神経のダメージが重い状態を示します。
- グレード1:背中や首の痛みのみ(抱っこや段差を嫌がる・震える)
- グレード2:歩けるがふらつく・足を引きずる
- グレード3:自力で立てない・歩けない
- グレード4:後ろ足が動かない(運動マヒ)・排尿できない
- グレード5:痛みの感覚も失う(最も重症)
後ろ足が動かない・おしっこが出せない・痛みに反応しないといった症状は、一刻を争う緊急事態です。できるだけ早く動物病院を受診してください。
かかりやすい犬種と原因
ダックスフンド・コーギー・ビーグル・フレンチブルドッグなど、軟骨が変性しやすい「軟骨異栄養性犬種」で椎間板ヘルニアが多くみられます。Hopperら(2026)は、ダックスフンドの背骨の健康状態が被毛タイプや体のサイズと関連することを報告しています。肥満や加齢、段差の昇り降りやジャンプの繰り返しも発症の引き金になります。
犬の椎間板ヘルニアの診断と治療
診断では、神経学的検査に加えてMRIやCTで圧迫の部位と程度を確認します。治療は重症度によって分かれ、軽症ではケージ安静と痛み止めなどの内科治療、重症では脊髄の圧迫を取り除く手術が検討されます。Malletら(2026)は、椎間板ヘルニアの手術を受ける犬を対象に、静脈内マグネシウムの鎮痛・抗炎症効果を調べた臨床試験を報告しています。
痛みの管理は治療のなかでも重要な要素です。Ngら(2026)は、椎間板ヘルニアの手術を受ける犬で、リドカインによる鎮痛・抗炎症効果を検討しています。
リハビリと回復
手術や内科治療のあとは、少しずつ体を動かすリハビリが回復を支えます。Kuricováら(2026)は、椎間板手術後の犬で水中トレッドミル(水の浮力を使った歩行運動)が機能回復に役立つ可能性を示しています。リハビリは必ず獣医師の指示のもとで、無理のない範囲で進めることが大切です。
椎間板ヘルニアの予防・介護に役立つグッズ4選
診断と治療は動物病院が前提ですが、日常では段差や床のすべりを減らす工夫が予防と再発防止に役立ちます。以下のグッズが参考になります。
ソファやベッドの上り下りの負担を減らすには、傾斜のゆるやかなドッグスロープが有効です。
フローリングのすべりは腰や足に負担をかけるため、滑り止めマットで対策しましょう。
歩行が不安定になった子には、体を支えて散歩を助ける歩行補助ハーネスが便利です。
関節や軟骨のケアには、グルコサミンなどを配合したサプリも選択肢になります。
椎間板ヘルニアの予防のポイント
予防の基本は、肥満を防ぐこと・段差やジャンプを減らすこと・滑らない床にすること・正しく抱っこすることの4つです。抱っこするときは、背骨が反ったり縦にぶら下がったりしないよう、お尻と胸を支えて背中を水平に保ちます。
肥満は腰への負担を増やし、椎間板ヘルニアのリスクになります。体重管理については犬の肥満と糖尿病リスクも参考にしてください。

まとめ
犬の椎間板ヘルニアは、背中や首の痛み・ふらつき・後ろ足のマヒといったサインで気づかれる、ダックスフンドなど胴の長い犬種に多い病気です。重症度はグレードで分けられ、軽症は安静と内科治療、重症は手術が検討されます。後ろ足が動かない・排尿できない場合は緊急なので、すぐに受診してください。日ごろから肥満を防ぎ、段差や床のすべりを減らすことが、発症と再発を防ぐ何よりの対策です。
参考文献
- Moore S, Early P, Olby N, et al. (2026). An update on practice patterns of North American and European veterinary neurology and surgery specialists for surgical management of acute canine thoracolumbar intervertebral disc extrusion. Journal of Small Animal Practice.
- Hopper M, Liu CC, Embersics C, et al. (2026). Dachshund spinal health by coat and size type. Journal of Veterinary Internal Medicine.
- Mallet G, Gaitero L, Sanchez A, et al. (2026). A randomized controlled trial of intravenous magnesium sulfate shows no analgesic or anti-inflammatory benefit in dogs undergoing thoracolumbar disk herniation surgery. American Journal of Veterinary Research.
- Ng R, Sanchez A, Wood G, et al. (2026). Analgesic and anti-inflammatory effects of lidocaine in dogs receiving fentanyl and undergoing thoracolumbar hemilaminectomy for intervertebral disc extrusion. Veterinary Anaesthesia and Analgesia.
- Kuricova M, Torok M, Zeleznik P, et al. (2026). Effect of postoperative underwater treadmill therapy on functional recovery in dogs undergoing intervertebral disc surgery: a retrospective matched cohort study. Journal of Veterinary Internal Medicine.
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